実費治療導入の問題点⑤ 「暗黙知」 |
今回は、全施術者が実費治療を行なうために何が必要かについて勉強した。
そこで、まず皆に知ってもらったのは「知識」についてである。
手技の勉強であれば、「技術」ではないかと感じるかもしれない。
しかし、実際に治療費を全額患者さんからいただくためには、
サービス業として、顧客の心をつかむことが重要である。
そのためには「知識」について知る必要があるからだ。
まず、「知識」には2種類あることを知ってもらった。
それは「形式知」と「暗黙知」である。
「形式知」とは、数値化やマニュアル化が可能なものであり、
人への情報伝達が比較的容易な知識のことである。
一方、「暗黙知」とは、経験や失敗によって蓄積した知識であり、
人に伝えることの難しい、「コツ」のようなものである。
学校などで勉強するのは、「形式知」が主体である。
「形式知」は教えてもらうことで、誰もが一定の成果を出すことができる。
一方「暗黙知」は、仕事などを通して体得していくものであり、
自分自身で気付き、学んで、身につけていくものである。
学業の優劣は「形式知」によるものが大きいが、
職人の世界の優劣は、完全に「暗黙知」によって決まる。
実費治療などは、それが顕著な世界ではないだろうか。
実費治療などで、患者さんの心をつかむようなことは、
「暗黙知」が大部分であり、教えることができないのだ。
例えば、入社時期が同じ新人が2人いたとする。
2人とも、同じ店舗に配属され、
同じ教育を受けたとしても、手技の修得期間は違ってくる。
さらに、施術人数という業績も、伸び続ける者と、
頭打ちが何年も続く人もいる。
これは「暗黙知」の違いと言っても過言ではない。
特に治療系は、リラクゼーション系と違い、
治療のルーティンそのものが複雑で標準化できない。
実費治療というのは、「暗黙知」のかたまりのようなものではないだろうか。
では、実費治療のための「暗黙知」を蓄積するにはどうすればいいのか?
もちろん、治療における専門的な知識や技術は重要である。
しかし、それは「形式知」によるものが多い。
実費治療で成功するには、
まず顧客である患者の心をつかむことが最重要ではないか。
だが、それは「形式知」が主体のセミナーや本だけでは、
学ぶことが困難である。
ここで、「患者視点を持つことが重要だ!」という人がいる。
確かにそのとおりだ。
では、どうすれば「患者視点」を持つことができるのか?
いくら患者の立場になって考えてみても不足がある。
まず、自分自身が患者になってみることである。
「なんだ、簡単じゃないか」という声もあるだろう。
では、実費治療を目指す人のうち、
どれぐらいの人が、自ら実費を払い患者体験をしているのか?
これが意外と少ない。
一流のすし職人を目指す人が、
回転寿司しか食べておらず、
「すしの作り方セミナー」ばかり出ていて成功するだろうか?
「この先生は、実費治療でも十分成功するだろう」と思える先生は、
必ず、定期的に患者として治療院めぐりをしている。
治療において、痛みをとることは重要であるが、
痛覚という肉体的な側面だけを見ていては、
人様からお金はいただけないだろう。
心理的な側面を満たしてこそ、
実費治療が成立するのではないだろうか。
その心理的側面を満足させるための、
「暗黙知」を、極限まで「形式知」に再現したものが、
「Q.S.C+Ⅴ」である。
まず、「Q.S.C+Ⅴ」という
満足度の指標(フレームワーク)をもって、
患者になるべきではないだろうか。
職場の仲間内や、
知り合いのところで患者体験してもこれはわからない。
自腹を切って、失敗や損をして初めて気付く部分がある。
当院のスタッフには、
今後、実費治療のスキルを身につけるために、
まず、最低4,000円以上の実費治療を
患者として受け続けることを勧めている。