上海治療事情 「治療家の差」 |
上海中医薬大学をリサーチすることだった。
大学は、上海空港から程近い開発地域に2年前に移転したそうで、
すばらしい環境と設備を兼ね備えていた。
大学の中には、海外からの留学生などを受け入れる部門として、
「国際教育学院」というのがある。
そこの日本部門責任者の張副教授とお話しすることができた。
張先生は、日本の医大にも留学経験があり日本語も流暢である。
私は直接、中国の治療事情などもお伺いした。
張先生のお話で興味深かったのは、
大学を卒業した中医師(治療家)の進路である。
ほとんどの卒業生は、開業せずに病院に勤めるのだという。
なぜなら病院は保険が利き一般患者も安く治療を受けることができる。
一般に開業しても保険は使えないのだそうだ。
では、実費治療で開業しないのか?
私が質問すると意外な答えが返ってきた。
「開業しても、生きていけませんから・・」
中国においても、それだけ実費治療の世界は厳しいということなのだろう。
その後、街中にある上海中医薬大学の付属病院なども受診した。
連日、ガイドに通訳してもらいながら複数の中医師の手技治療を受けた。
そこで感じたのは、
同じ医師で使う手技は同じでも、治療の良し悪しは大きく違うということだ。
では、あまり言葉が通じない中で、何が治療の良し悪しを決めるのか?
それは、その治療家の風貌(身だしなみ)、
そして患者に接する態度、話し時の表情である。
それらの第一印象が良ければ、その後受けた治療も
効果的に感じるし、実際の改善度も高かった。
特に一番良かったのは、岳陽医院の主任格のDrだった。
プレスされた白衣で髪はきっちりカットされており、
履いている黒靴はピカピカに磨かれていた。
年齢は40前半ぐらいだが、Drとしての威厳を感じた。
しかし、物腰は柔らかく優しさがあった。
治療に関しても、予想通り質の高いものだった。
逆に、パッとしない風貌で、
表情も、どことなく自信なさげなDrであれば、
やっぱり受けた治療も今ひとつだった。
たとえ言葉が直接的に通じなくても、
第一印象と治療効果は、完全に比例していた。
成功する治療家の前提条件は「セルフマネジメント」であると確信できた。
ここは、やはり万国共通なのだろう。
最近、私がよく思うことがある。
「整骨院経営者が100人いて、
全員が一斉にうどん屋に商売換えしたらどうなるのだろう?」と。
整骨院経営の優劣の順位は、
たぶん、うどん屋になっても序列はほとんど同じになるであろうと思う。
それは、上海で受けた治療家にも同じことを感じた。
「利益のピラミッド経営法」におけるリーダーシップの条件、
「自己管理・時間管理・アピアランス(身だしなみ)」そのものである。