実費治療への移行 ~店舗は同じでいいのか |
この実費治療院は約5年程経営した後に、
家賃約14万円を節約するために整骨院内に統合することにした。
整骨院内のベッドにも空きがあったからだ。
実費治療院の最終担当者は女性施術者だったが、
彼女が実費であげていた約40万ほどの実費売上げは、
整骨院内に移行してからはどうなったか?
もちろん、実費治療院と整骨院は近いので、
今までの患者様が継続して来院してくださった。
しかし、来院頻度は次第に低下していった。
そして、やがて来院されなくなった方もあった。
このことは何を意味するのか?
施術する担当者も、施術内容も料金も一緒である。
あと違うのは、空間だけである。
なぜ同じ術者の固定患者様が、場所を変えただけで来なくなるのか?
治療業界において、
「良い治療をすれば患者は来る」という固定概念は根強い。
その論理で言えば、どこで治療しようが患者は来るということになる。
これは治療業界が、患者満足度を提供する「商品論」のみで捉えがちだからだ。
その論理で言えば、回転寿司の店舗内でも、新鮮高級素材のネタを使えば、
高い料金が取れるということになってしまう。
私の学んだ経営原則では、
商品やサービスは提供する「空間」も重要であり、
商品価値そのものを高めるプレゼンテーションの役割があるということだった。
治療においても同じであり、治療室内という「空間」も治療効果の一部であると思う。
だから、整骨院内で実費治療をするのなら、
治療ゾーンは完全に分離するのが好ましく、
できれば別棟が理想ではないだろうか。
すでに実費治療の導入が進んでいる歯科業界でも、
保険診療とホワイトニングなどの審美歯科ゾーンは分離が主流である。
やはり、それぞれの治療のコンセプトに合った空間作りが大切なのであろう。
さしずめ施術者が役者で、治療室が舞台といったところだろうか。
やはり良い治療家は、良い治療空間作りにもたけている。
私がかつて見たアメリカのカイロプラクティックオフィスや、
橋本敬三先生の温古堂の治療室内の静寂さは、
治療効果のための重要な要素なのだと感じた。