市場予測② 「鍼灸・マッサージ・柔道整復市場」 |
「2006年版・ハンドトリートメント市場の展望と戦略(矢野経済研究所)」
を参考に考えたい。
矢野経済研究所は、あらゆる業界に対して市場情報を提供する理由として、
「自社のおかれた競争環境を多角的に理解し、自社の強み・弱みを
分析した上で、本格的な『選択と集中』が成功の条件である」
としている。
それは、整骨院が実費治療という特殊な市場に参入する場合も同様であろう。
前回も述べたが、
「ハンドトリートメント」とは「統合医療」のことで、
アンドリュー・ワイル博士が提唱した概念である。
ここでは「鍼灸・マッサージ・柔道整復・カイロプラクティック・
リフレクソロジー・ボディケア」などを指している。
これらの市場を大きく分けると
①鍼灸・マッサージ・柔道整復
②カイロプラクティック・整体
③リフレクソロジー・ボディケア
となっている。
これら3つを含む「ハンドトリートメント」市場全体は、
確実な成長傾向にある。
2003年から2005年までのたった2年で107%にも成長している。
そして5年後の2008年までで114%の伸びを推測している。
市場規模推定は7,830億円である。
だが、その中での市場の傾向性はそれぞれ違う。
今回は「鍼灸・マッサージ・柔道整復」市場についての分析を参考にしたい。
市場動向としては次のように述べている
「東洋医学が見直されていることにより、
注目を浴びている鍼灸・マッサージ・柔道整復であるが、個人事業がほとんどであり、(中略)以前の医療施設同様、経営や患者満足度という視点が欠如している場合が多く、こういった視点が欠如している施術所は業績を悪化させているところも多い。」
そして、経営や患者満足度という視点をもっている施術所が繁盛店になる等、
二極化が進んでいると分析している。
本文はまだ、長くつづくのだが、
繰り返しこの業界の「患者満足度の欠如」を指摘している。
その理由としては以下の通り。
「個人事業がほとんどなので、会社組織として運営している場合も、有限会社など小規模のものがほとんどであり、患者などの利用者にとって非常にわかりづらい業界となっている」
たしかに、業界の是非を問う以前に、
「どんなときに行ったら良いのかわからない」と言う一般生活者も多い。
また業界における経営の視点が欠如していることについては、
「鍼灸・マッサージ・柔道整復業界では、リフレクソロジー、ボディケアを無資格営業だとして敵視するだけでなく、リフレクソロジー、ボディケアが消費者に受け入れられている理由を考える必要があろう」
と述べてある。
リフレクソロジー、ボディケア業界が成功した理由としては、次の通り。
①経営システムができていること(経費・収支バランス、立地調査、顧客管理販促等)
②ブランドの信用力(品質・価格に対しての安心感)
③都心部の店舗展開、清潔で入りやすい店舗、顧客視点に立った
丁寧な顧客対応、 短時間から利用できる手軽さ
④明瞭な料金システム
これらを踏まえた上で、次のようにも言っている。
「業界(柔整)としては、こういったノウハウを活用して『国家資格者』であるということを前面に押し出して展開していくことが必要である。こうすることによって差別化を図ることが可能となり、当該業界も成長すると考えられる」
以上のように指摘された現状の問題点について、
「偉そうなことを言うな!」とか「けしからん!」というのは簡単である。
だが、この市場調査の特色は、
整骨院業界と相反する団体や、利害関係者とは無縁の調査会社が、
客観的なデータに基づいて分析したものであることを重視したい。
最後に、
今後の「市場見通し」と「市場規模予測」については
次のように締めくくられている。
「今後は統合医療のさらなる浸透によって東洋医学の利用が進むこと、有資格者が今後増加していくこと、などから市場は拡大基調を辿ると見られる」
「しかしながら、今後は、施設の増加に加えてリフレクソロジーなどとの競合も増えることから、『国家資格者』として病院や福祉施設との連携を図り、リフレクソロジーやボディケアとの差別化を図ることに加え、リフレクソロジーやボディケアが消費者に受け入れられている方式などを参考に展開を考えていく必要がある」
「今後は上記のような取組みを行なって収益を拡大する施設が増加する一方で、患者満足を考えたサービスの提供、技術力の確保及び向上、などが出来ない施設は収益を悪化させるなどの優勝劣敗が進むと見られる」
ということは、
我々も、リフレクソロジーやボディケアに素直に学びつつ、
かつ、有資格者としての差別化を図る必要があるということだ。
では、我々も参入の可能性がある実費治療の市場とは、
どのような傾向性があるのであろうか?
次回は、「カイロ・整体市場」と、
「リフレクソロジー・ボディケア市場」について分析したい。